万引まんびき)” の例文
自分は当時の世間よのなかに事実全身に刺青ほりものをなし万引まんびきをして歩いたやうな毒婦が幾人いくたりあつたにしても、其れをば矢張やはり一種の芸術的現象と見倣みなしてしまふ。
虫干 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
あの娘は盗癖があるかと思っていたがさいわいにそうではないらしい。万引まんびき掏摸すりになられては厄介だが、あのくらいのところで運命が定まればまずいいほうだろう。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
掏摸すりだの万引まんびきなんぞもやッぱりそうだろう。おれも——まさか掏摸や万引はしないけれど、後暗うしろぐらい事だの、秘密な事には興味がある。何となく妙に面白いもんだなア。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)