七顛八倒しちてんばっとう)” の例文
さあ、七顛八倒しちてんばっとう、で沼みたいな六畳どろどろの部屋を転摺のめずり廻る……炎がからんで、青蜥蜴あおとかげ踠打のたうつようだ。
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
前へのめるとかおから胸いっぱいたちまち泥だらけとなって、七顛八倒しちてんばっとうする有様は見られたものではありません。
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
見るとうと提灯ちょうちんの灯に照らされて、藤屋の万兵衛が七顛八倒しちてんばっとうの苦悶をつづけているのです。
夜も静か、老公の声もいと穏やかなのに、ひとり胸の中で七顛八倒しちてんばっとうしていた。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其の時分、大きな海鼠なまこ二尺許にしゃくばかりなのを取つて食べて、毒に当つて、死なないまでに、こはれごはれの船の中で、七顛八倒しちてんばっとう苦痛くるしみをしたつて言ふよ。……まあ、どんな、心持こころもちだつたらうね。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
劇毒のあらわれは、たちどころに、武大は七顛八倒しちてんばっとうもがき廻った。そして近所へも響き渡りそうな絶叫を発しるので、彼女は武大の体に蒲団ふとんをかぶせた。絹を濡らして、武大の鼻から口をふさいだ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お徳が出かけて間もなく、手代の福三郎は七顛八倒しちてんばっとうの苦しみを始め
そこで名状すべからざる混乱が起って、残らずの人が七顛八倒しちてんばっとうです。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)