丁字形ていじけい)” の例文
堀のうちから医者の所へ行くには、門を出て一二丁町東へ歩いて、そこに丁字形ていじけいを描いている大きな往来をまた一つ向うへ越さなければならなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そんな叫びを聞き捨てながら、武蔵は、最初の戦端を切った丁字形ていじけいの辻を捨て、三道のうちでいちばん道幅のせまい修学院道へ向って駈け込んで行ったのである。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
客は丁字形ていじけいに二つ並べた、奥の方の縁台に腰をかけて、てのひらうなじおさえて、俯向うつむいたり、腕をこまぬいて考えたり、足を投げて横ざまに長くなったり、小さなしかも古びた茶店の、薄暗い隅なるかた
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
院内では小使が丁字形ていじけいの棒の先へ雑巾ぞうきんくくり付けて廊下をぐんぐん押して歩いた。雑巾をゆすがないので、せっかく拭いた所がかえって白く汚れた。軽い患者はみな洗面所へ出て顔を洗った。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と——丁字形ていじけいまくをはった矢来のすみのたまり場から、くろい服をまとった男が、のっそりと刑場のまン中にでてきて、ジロジロと矢来の周囲しゅういを見たり、天をあおいでなにかつぶやいているようす。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)