一撫ひとな)” の例文
可懐なつかしいわ、若旦那、盲人の悲しさ顔は見えぬ。触らせて下され、つかまらせて下され、一撫ひとなで、撫でさせて下され。)
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、大高源吾は、ほっと胸を一撫ひとなでした心地だった。それからも、おとなうたびに、心づけを贈った。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
祖父は最後にこう呟いて、真赤にやけた向こうずね一撫ひとなでして腰を伸ばした。そして、菊枝を蹴起こしてやるというような意気込みで、彼女の寝ている部屋に這入って行った。
緑の芽 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
こう言って津村検事はハンカチで額を一撫ひとなでして、ちょっと署長のほうを振り返り、次に山本医師の顔を眺めた。両者とも異議がなかったと見え、ただ肯定的にうなずくだけであった。
愚人の毒 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
河田が「臼」を一撫ひとなでした。
工場細胞 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)