一小間ひとこま)” の例文
ト立直して裏を見せると、かねて用意がしてあった……その一小間ひとこまあいを濃く真青まっさおに塗ってあった。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一小間ひとこま硝子がらすを張って、小形の仏龕ぶつがん、塔のうつし、その祖師のかたちなどを並べた下に、年紀としごろはまだ若そうだが、額のぬけ上った、そして円顔で、眉の濃い、目の柔和な男が
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一時あるときなどは椽側えんがわに何だか解らぬが動物の足跡が付いているが、それなんぞしらべて丁度ちょうど障子の一小間ひとこまの間を出入ではいりするほどな動物だろうという事だけは推測出来たが、たれしも
一寸怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どぶはなしに柵を一小間ひとこま、ここに南天の実が赤く、根にさふらんの花がぷんと薫るのと並んで、その出窓があって、窓硝子まどがらすの上へ真白まっしろに塗ったかねの格子、まだ色づかない、つたの葉が桟に縋ってひさしう。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)