一壜ひとびん)” の例文
葡萄酒ぶどうしゅ一壜ひとびんきりで、それもあやしげな、くびのところがふくれ返ったどす黒い代物しろもので、中身はプーンと桃色ももいろのペンキのにおいがした。もっとも、誰一人それは飲まなかった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
「ボラギノール一壜ひとびんで、君があんなに器用な真似をするとは思わなかった」
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
世界の如何いかなる片隅をも我家わがやのように楽しく談笑している外国人の中に交って、自分ばかりは唯独り心淋しく傾けるキァンチの一壜ひとびんに年を追うて漸く消えかかる遠い国の思出を呼び戻す事もあった。
銀座 (新字新仮名) / 永井荷風(著)