一埒いちらつ)” の例文
も憚らずいぎたなく熟睡に及びたる一埒いちらつ何とも申訳の言葉も無之これなく朧気乍おぼろげながら昨日の御話に依れば令閨れいけい御死去に関して何か疑惑を
恐ろしき錯誤 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
昼の一埒いちらつを娘のお京さんから聴いて、事の切迫をさとった鞍掛宇八郎は、鳴川留之丞に直々の掛合をする心算つもりで昨夜ここへ乗込んで来たに相違ない。
馬鹿にした憎い奴、南科なんか屈静源くつせいげんは自分が取立てたのですから、今書面を静源につかわしました。静源は自分のためにこの一埒いちらつを明けてくれましょう
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「一つわっしに代って、さっきの一埒いちらつを親方にちまけて見ておくんなさい」
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一埒いちらつが済んでから、ガラッ八は今度ばかり九分通り自分の手柄にして貰って、すっかり好い心持になっているのでした。
銭形平次捕物控:124 唖娘 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
何か変ったことがあったら——と、この盗難を予期するともなく、ガラッ八を付けておいた平次、その日の朝のうちに一埒いちらつを聞込んでしまいました。
いいとも、この一埒いちらつは笹野様も御奉行様も御存じだ。東作はお上でも持て余した悪党、それを
「なんだ、それじゃお千勢殺しの一埒いちらつがこんがらかって、金六兄哥が持て余したんだろう」
八五郎は註沢山に話を進めて、この一埒いちらつを説明するのでした。
山谷の春徳寺へ、三千両奉納の一埒いちらつ
銭形平次捕物控:239 群盗 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)