-
トップ
>
-
スヰス
ドリヷルが「先年
瑞西のベルンの旅先で偶然マネの絵の
掘出物をして
纔四十フランで買つて来たが、
或手筋の人に望まれて三万四千フランで手放した」
此恨は初め一抹の雲の如く
我心を
掠めて、
瑞西の山色をも見せず、
伊太利の古蹟にも心を留めさせず、中頃は世を
厭ひ、身をはかなみて、
腸日ごとに九廻すともいふべき惨痛をわれに負はせ
僕は往復二ヶ月間の割引二等乗車券を買つて
伊太利行の汽車に乗つた。
仏蘭西から
瑞西へ
入ると
最う真冬の景色で枯残つた菊の花に
綿の様な雪が降つて居た。