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しろじゅす
まず彼女は、
白繻子の訪問服の上から
木鼠の毛皮外套を着て、そして、スキイを
履いた。帽子には、驚くべきアネモネの
縫とりがあった。
耳環は
真珠の母の心臓形だった。
髪は白
元結できりりと巻いた
大髻で、
白繻子の下着に褐色無地の
定紋附羽二重小袖、献上博多白地
独鈷の角帯に
藍棒縞仙台平の裏附の
袴、
黒縮緬の紋附羽織に
白紐を胸高に結び
なるほど充分に雨を含んだ
外套の
裾と、中折帽の
庇から用捨なく冷たい
点滴が畳の上に垂れる。
折目をつまんで
抛り出すと、婆さんの膝の
傍に
白繻子の裏を天井に向けて帽が
転がる。