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しみずだに
さて此の医者の
知己で、
根津の
清水谷に
田畑や貸長屋を持ち、その
上りで
生計を立てゝいる浪人の、
萩原新三郎と申します者が有りまして、
生れつき
美男で、年は二十一歳なれどもまだ妻をも
娶らず
況や待望の雨となると、長屋近間の
茗荷畠や、水車なんぞでは気分が出ないとまだ
古のままだった番町へのして
清水谷へ入り
擬宝珠のついた弁慶橋で、一振柳を胸にたぐって
私はただその
気高い
艶麗な人を、今でも神か仏かと、思うけれど、
後で考えると、先ずこうだろうと、思われるのは、
姥の娘で、
清水谷の温泉へ、
奉公に出ていたのを、祭に
就いて