『春』
春といふと、曾て紀州にあそんだ時のことが思ひ出されて来た。あそこは潮流の関係で、春の来ることが早く、伊勢あたりはまだやつと梅の花が散つた頃なのに、そこでは山桜が咲きみだれ、夏蜜柑が黄熟し、菜の花が黄く、蛙の声が到るところに湧くやうきこえた。 …
著者 | 田山録弥 |
著者 | 田山花袋 |
ジャンル | 文学 > 日本文学 > 日記 書簡 紀行 |
初出 | 「婦人之友 第十七巻第四号」1923(大正12)年4月1日 |
文字種別 | 新字旧仮名 |
読書目安時間 | 約2分(500文字/分) |
朗読目安時間 | 約3分(300文字/分) |
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