トップ
>
毟
>
むし
ふりがな文庫
“
毟
(
むし
)” の例文
彼
(
かれ
)
は
苦
(
くる
)
しさに
胸
(
むね
)
の
邊
(
あたり
)
を
掻
(
か
)
き
毟
(
むし
)
り、
病院服
(
びやうゐんふく
)
も、シヤツも、ぴり/\と
引裂
(
ひきさ
)
くので
有
(
あ
)
つたが、
施
(
やが
)
て
其儘
(
そのまゝ
)
氣絶
(
きぜつ
)
して
寐臺
(
ねだい
)
の
上
(
うへ
)
に
倒
(
たふ
)
れて
了
(
しま
)
つた。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
歩きながら
道傍
(
みちばた
)
の豆の葉を、さっと
毟
(
むし
)
りとっても、やはり、この道のここのところで、この葉を毟りとったことがある、と思う。
女生徒
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
体中
(
からだぢう
)
珠数生
(
じゆずなり
)
になつたのを
手当次第
(
てあたりしだい
)
に
掻
(
か
)
い
除
(
の
)
け
毟
(
むし
)
り
棄
(
す
)
て、
抜
(
ぬ
)
き
取
(
と
)
りなどして、
手
(
て
)
を
挙
(
あ
)
げ
足
(
あし
)
を
踏
(
ふ
)
んで、
宛
(
まる
)
で
躍
(
をど
)
り
狂
(
くる
)
ふ
形
(
かたち
)
で
歩行
(
あるき
)
出
(
だ
)
した。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
二人は起きつ転びつ
毟
(
むし
)
り合っている
中
(
うち
)
に、安行は自分の敵を突き
退
(
の
)
けて十
間
(
けん
)
ばかりは逃げたらしい。敵もつづいて追って行った。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
花田は残りの山椒の葉を
毟
(
むし
)
っています。と、また不意に社宅の蔭から文吉が現れました。その後から貸船屋のお秀が現れました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
▼ もっと見る
みんないつかは、一人の例外もなしに、必ずいつかは絶望に身を
掻
(
か
)
き
毟
(
むし
)
り、悲しみに泣き叫ぶときがくるだろう。かれはそのように思った。
はたし状
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
と倒れる処を新吉が掴み付こうと思ったが、イヤ/\荷物を脇へ落したからと荷物を探す途端に、甚藏の
面
(
つら
)
へ
毟
(
むし
)
り付いたから
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
林冲に
翻弄
(
ほんろう
)
されるのが甘美でさえあった。気づいたときは、手にさいごの一剣もなく、林冲の
猿臂
(
えんぴ
)
にかかって、鞍の上から
毟
(
むし
)
りとられていた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ガラッ八が集めて、平次の耳に聴えた情報では、お隣のお秀と張り合って、とうとう紋次郎を
毟
(
むし
)
り取ったといったような
凄
(
すご
)
い話もあったのです。
銭形平次捕物控:123 矢取娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
紅顔
豊頬
(
ほうきょう
)
、みずみずしかった切長の黒瞳も、毛を
毟
(
むし
)
られたシャモみたいな肌になり
顴骨
(
かんこつ
)
がとびだし、乾いた瞳に絶えず脅えた表情がよみとられた。
さようなら
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
丁度彼が
毟
(
むし
)
っている草の芽の
地面
(
じべた
)
を割って出て来るように、彼の
内部
(
なか
)
に
萌
(
きざ
)
したものは恐ろしい勢で
溢
(
あふ
)
れて来た。髪は濃くなった。頬は熱して来た。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
羽根は飛んで
了
(
しま
)
い、
檣
(
マスト
)
は折れ、その他表面にある附属物は一切滅茶滅茶に破損して、まるで
蝗
(
いなご
)
の足や羽根を
毟
(
むし
)
ったように鉄製の胴だけが残っている。
月世界跋渉記
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
頭上の蓋を掻き
毟
(
むし
)
っている有様と云うのが、恐らくまた、残虐な快感をもたらせたものだったかも知れないのである。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
冬になって、ストーブを
焚
(
た
)
き始めると、彼は早速もう春の脱毛の時期が来たのだと思って、羽を
毟
(
むし
)
りだす。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
手近の
杜松
(
ひば
)
の枝などから
毟
(
むし
)
り取って見ると、すぐに其処へ捨てようと云う気になれない。少くとも暫くの間は手すさびに指へ絡んでみたり掌中へまるめてみたりする。
茸をたずねる
(新字新仮名)
/
飯田蛇笏
(著)
妙見勝三郎の首がくわえている紙きれを、ツと
毟
(
むし
)
り取って、造酒の足もとへポイと
抛
(
ほう
)
った。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
それでもし不幸にして離婚になると、その男は大いに怒ってその女の結婚玉瑜をその頭の飾りからしてひん
毟
(
むし
)
ってしまう。むしってしまえばそれで離婚ということが
極
(
きま
)
ります。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
去年夫に白眼の黄色いのを発見されたのがちょうど
今頃
(
いまごろ
)
であったことを思い出すと、そのまま下りて行って、あの時夫がしたように平戸の花のよごれたのを一つ一つ
毟
(
むし
)
り始めた。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
あの裏庭の
無花果
(
いちじく
)
の陰で、さびしい花を
毟
(
むし
)
っては、泉水へ流しながら、あれほど私が情をこめて、心のたけを申しました時も、
甘
(
うま
)
くはずして、はっきりとした御返事は下されず。
レモンの花の咲く丘へ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
こうした頽廃的な雰囲気の中に、いつも絶えない、座員間の
軋轢
(
あつれき
)
と、華やかな底に澱む、ひがんだ蒼黒い空気とは、幼い黒吉の心から、跡形もなく「朗らかさ」を
毟
(
むし
)
り取って仕舞った。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
急
(
いそ
)
いであたしは
一掴
(
ひとつかみ
)
の
草
(
くさ
)
を
毟
(
むし
)
つて、
此児
(
このこ
)
の
口
(
くち
)
と
手
(
て
)
を
拭
(
ふ
)
いてやつて、かう
言
(
い
)
つた。
癩病やみの話
(新字旧仮名)
/
マルセル・シュウォッブ
(著)
青楼十二時
(
せいろうじゅうにとき
)
の図につきては
宛
(
さなが
)
ら人の心を
毟
(
むし
)
るが如き色調の
軟
(
やわら
)
かさを述べていふ
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
彼女はまったく、じっとしてはいられないような気持ちだった。
遣
(
や
)
る
瀬
(
せ
)
のない気持ちで、彼女は自分というものを片っ端から引き
毟
(
むし
)
ってしまいたいほどだった。彼女の心臓は
酷
(
ひど
)
く痛んできていた。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
「
毟
(
むし
)
ってはならん」と
ウクライナ人
(
とさかあたま
)
の老人が言った
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
かじかむ指を噛み、張りつむる胸を
毟
(
むし
)
る。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
彼
(
かれ
)
は
苦
(
くる
)
しさに
胸
(
むね
)
の
辺
(
あたり
)
を
掻
(
か
)
き
毟
(
むし
)
り、
病院服
(
びょういんふく
)
も、シャツも、ぴりぴりと
引裂
(
ひきさ
)
くのであったが、やがてそのまま
気絶
(
きぜつ
)
して
寐台
(
ねだい
)
の
上
(
うえ
)
に
倒
(
たお
)
れてしまった。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
翌
(
あく
)
る日平次が谷中の清養寺へ行ったのは、まだ
辰刻
(
いつつ
)
(八時)少し過ぎ、お類が朝の膳を片づけて、寺男の弥十は庭の草を
毟
(
むし
)
り始めた時分でした。
銭形平次捕物控:031 濡れた千両箱
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ポプラの大木は鞭のように
撓
(
しな
)
い曲りながら、撓い返すと見る間に、片側の葉は残らず
削
(
そ
)
ぎ飛び、現れた枝は半身
毟
(
むし
)
り取った
鰶
(
このしろ
)
の骨のように見えます。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
彼は絶えず、小びんの毛を掻き
毟
(
むし
)
っては荒い吐息をつき、また、それにつれて刻み畳まれた
皺
(
しわ
)
が、ひくひくと顔一面に引っ
痙
(
つ
)
れくねってゆくのだった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
こんなことを言って、いきなり
其処
(
そこ
)
にある草を
毟
(
むし
)
って、
朋輩
(
ほうばい
)
の口の中へ
捻込
(
ねじこ
)
むのもあった。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
草を
毟
(
むし
)
れ、
馬鈴薯
(
じゃがいも
)
を掘れ、貝を突け、で、焦げつくやうな炎天、
夜
(
よる
)
は
毒蛇
(
どくじゃ
)
の
霧
(
きり
)
、
毒虫
(
どくむし
)
の
靄
(
もや
)
の中を、
鞭
(
むち
)
打ち鞭打ち、こき使はれて、
三月
(
みつき
)
、
半歳
(
はんとし
)
、一年と云ふ
中
(
うち
)
には、大方死んで
印度更紗
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
とみ嬢の好奇心は正に頂点に達し、両手は夢中で生垣の檜葉の
秀
(
ほ
)
を
毟
(
むし
)
りちらしている。
風流化物屋敷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
爪の色が見る見る灰色となり、握った指先に
毟
(
むし
)
られたのは一本の
桔梗
(
ききょう
)
の花であった。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
きっとまた、自分に隠れて会合へ出ていったのに相違はないと彼女は思った。なぜ妻にまで秘密にする必要があるのだろう? と思うと、彼女はなにかしら
掻
(
か
)
き
毟
(
むし
)
りたいような気持ちになっていた。
猟奇の街
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
男は拾うより早くも
其羽
(
そのはね
)
を
毟
(
むし
)
り取って、燃え
颺
(
あが
)
る火に肉を
炙
(
あぶ
)
った。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
と云ってから、又
暫
(
しばら
)
く
毟
(
むし
)
っていて
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
念のために、玄々斎の着物、滝松の着物を一枚一枚調べましたが、花色木綿の裏の
毟
(
むし
)
られた袷などは一枚も見当りません。
銭形平次捕物控:094 死相の女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
わたくしは何か心の記念のように渚の草の葉を
毟
(
むし
)
り、流れに一葉舟を泛べてからまた小丘の上へ登って行きました。啓司はそこでなお待っていて呉れました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
草
(
くさ
)
を
毟
(
むし
)
れ、
馬鈴薯
(
じやがいも
)
を
掘
(
ほ
)
れ、
貝
(
かひ
)
を
突
(
つ
)
け、で、
焦
(
こ
)
げつくやうな
炎天
(
えんてん
)
、
夜
(
よる
)
は
毒蛇
(
どくじや
)
の
霧
(
きり
)
、
毒蟲
(
どくむし
)
の
靄
(
もや
)
の
中
(
なか
)
を、
鞭打
(
むちう
)
ち
鞭打
(
むちう
)
ち、こき
使
(
つか
)
はれて、
三月
(
みつき
)
、
半歳
(
はんとし
)
、
一年
(
いちねん
)
と
云
(
い
)
ふ
中
(
うち
)
には、
大方
(
おほかた
)
死
(
し
)
んで
印度更紗
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
家の
周囲
(
まわり
)
に生える雑草は
毟
(
むし
)
っても毟っても後から後からと頭を
擡
(
もた
)
げつつあった。捨吉は表門の外へも出て見て、竹がこいの垣の根にしゃがみながら草むしりに余念もなかった。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
中には、首っ玉へ
齧
(
かじ
)
り付かれたり、髪を
毟
(
むし
)
られたり、わざと畳に滑って転げたり、きわどいことまでして見せました。
銭形平次捕物控:054 麝香の匂い
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
洋傘を振り腕を拡げて手に触れる熊笹を
毟
(
むし
)
って行く。それは少年のような身軽さでもあり、自分の持地に入った園主のような
気儘
(
きまま
)
さでもある。そしてときどき私に
東海道五十三次
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
転げるように飛込んで来たのは、五十年配の女——お菊の母親のお
楽
(
らく
)
でした。いきなり徳松を突き飛ばすと、その
膝
(
ひざ
)
の上から、娘のお菊を
毟
(
むし
)
り取ります。
銭形平次捕物控:066 玉の輿の呪い
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
蛍雪は出来上ったものを
毟
(
むし
)
って
生醤油
(
きじょうゆ
)
で食べると近来にない美味であった。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「根のある毛が一本もないし、両端が細くなって枯れているところを見ると、切れた毛や
毟
(
むし
)
り取った毛でもない」
銭形平次捕物控:053 小唄お政
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その代り食物屋の軒電灯の集まっている暗い路地の人影を気にしたり、カフェの入口の
棕梠竹
(
しゅろだけ
)
を無慈悲に
毟
(
むし
)
り取ったりした。それがどうやら田舎臭い感じを与えて、かの女に失望の影をさしかけた。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
立ち上がると、お村を縛った縄を解いて、そのまま逃げ出そうとするのを、膝の下へ引据えて、引き
毟
(
むし
)
るように、帯を解いて、着物を脱がせてしまいました。
銭形平次捕物控:016 人魚の死
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
昭青年はこれを
聴
(
き
)
いて
腸
(
はらわた
)
を
掻
(
か
)
き
毟
(
むし
)
られるような思いをしました。
鯉魚
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
一枚の褞袍の裏が釘に引裂かれて、一寸五分ほど、
毟
(
むし
)
り取られたまま白い綿を見せているではありませんか。
銭形平次捕物控:094 死相の女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
伊保木金太郎の着物から
毟
(
むし
)
れたらしい、糸屑や小さい
巾
(
きれ
)
などが引っ掛って居るではありませんか。
銭形平次捕物控:238 恋患い
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
毟
漢検1級
部首:⽑
8画
“毟”を含む語句
草毟
掻毟
松毟鳥