しょう)” の例文
こんどやってきたら、鉄砲てっぽうころしてしまうといっているひともあるくらいです。けれど、しょうちゃんは黒犬くろいぬをかわいがっていました。
僕がかわいがるから (新字新仮名) / 小川未明(著)
お君さんとその弟のしょうちゃんとが毎日午後時間を定めて習いに来た。正ちゃんは十二歳で、病身だけに、少し薄のろの方であった。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
樹島は背戸畑の崩れた、この日当りの土手に腰を掛けて憩いつつ、——いま言う——その写真のぬしをしょうのもので見たのである。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大友とおしょう何時いつしか寄添うて歩みながらも言葉一ツ交さないでいたが、川村の連中が遠く離れて森の彼方で声がする頃になると
恋を恋する人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
夜廻りの通ったのはしょう九つ、その跫音あしおとが遠のくのを合図のように、お長屋の四番目の窓の障子が、内から静かに開きました。
「さあ参りましょう。私共なぞもお札がいただけるかいただけないか、とにかくしょうのままをお目にかけてお願い致してみましょうでございます」
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
現内閣の巨星、しょう四位勲三等警視総監赤松紋太郎もんたろう氏は、今やトランク詰めの一個の生きた荷物となり終ったのである。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
相「へい来年の二月では今月が七月だから、七八九十十一十二しょう二と今から八ヶ月あいだがあるが、八ヶ月では質物しつもつでも流れて仕舞うから、余り長いなア」
平靖号が走りだしてから、それはしょう二分ののちのことであった。天地も崩れるような大音響が、それに瞬間先んじて一大火光とともに、平靖号をおそった。
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あたしは何の気もなく蔵前くらまえにいって、階段に足をかけながら振りむくと——しょうのもののおばけかと思った。
六時前に朝の食事を済ませると、人夫を連れて、道案内に来てくれた町の助役さん、宿の主人あるじそのさんと自動車で宿を出たのがしょう六時。目的の新焼しんやけ熔岩流を見るためである。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
(一)位あるものは位田いでんを給せられる。一品いっぽん(親王)八十町より四品四十町、しょう一位八十町より従五位八町まで。女はその三分の二。(二)官職にあるものは職分田しきぶんでんを給せられる。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
「からかっちゃいけません。しょうの話、あっしには、それが不思議でならねえンです」
しょうの物にぶっつかって、アッと思ったトタンに、自分がどんなをあげるかです。丁と出るか半と出るか、そいつが掛け値なしの自分です。よしんば醜態をさらしても、もうこれ、致し方なし。
好日 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
しょうの物を見たら、これはほんとうに驚くのかも知れぬが、写真だけでは、立体感を強いるような線ばかりが印象して、それに、むっちりとしたししおきばかりを考えて描いているような気がして
山越しの阿弥陀像の画因 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
へえ、早くなおってよかったわね。あのね、しょうちゃん、たいへんなのよ。クロがはらいたをおこしちゃって、お薬をのませようとしても、のまないの。みんなこまっているの。だから正ちゃんを
正坊とクロ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
雨乞いならば八大はちだい龍王を頼みまいらすべきに、壇の四方にぬさをささげて、南に男山おとこやましょう八幡大菩薩、北には加茂大明神、天満天神、西東には稲荷、祇園、松尾、大原野の神々を勧請かんじょうし奉ること
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
成田邸への襲撃は、その夜のしょうの刻と決った。
仇討禁止令 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「おお、これがおれの道楽かな。その子の出生は午前しょう六時、好い時刻だ。それに三月十五日、明治八年か。それで事はすっかり明白になった。いや、維新変革の後八年。ちょっと待てよ。それでは上宮太子じょうぐうたいし御生誕後幾年になる。」
「なんのあなた、しょうの金ですよ」
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しょうか? にせか?」
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
しゃしんやさんは、しょうちゃんを すべりだいの うえへ かけさせ、おねえさんに ランドセルを しょわせて、したへ たたせました。
しゃしんやさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのむくみ加減といい、瓢箪頭のひしゃげました工合ぐあい、肩つき、そっくりしょうのものそのままだと申すことで……現に、それ。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そうですとも、ああいうところへは馬鹿は馬鹿なりに、悪人は悪人なりに、しょうのまま持って行ってお目にかけるよりほかは仕方がござんせんな」
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
其後三四日大友は滞留していたけれどおしょうには最早、の事に就いては一言も言わず、お給仕ごとに楽しく四方山の話をして、大友は帰京したのである。
恋を恋する人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「ショウ一二ジ」は、しょう十二時で、午前零時れいじかっきりに、ぬすみだすぞという、確信にみちた文意です。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そうつッかゝって来られちゃア困るぜ、吉原にも成田の講中こうじゅうが極ってゝ、しょう五九月には参詣にくのに、お前達も成田街道で御飯おまんまア喰ってる人間じゃアねえか、わっしは吉原の幇間ほうかん
ボーン、ボーンと遠くの部屋から、しょう九時を知らせる時計が鳴りだした。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
……虎雄なんども自分の目でしょうのところば見てくるがええて。
斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
まことくんだって、なくすやい。昨日きのううわぐつをかたっぽおとしてきて、おかあさんにしかられていたから。」と、しょうちゃんはいいました。
ボールの行方 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いや、もう、先方さき婦人おんなにもいたせ、男子おとこにもいたせ、人間でさえありますれば、手前はしょうのもの鬼でござる。——おおかみ法衣ころもより始末が悪い。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ところが、生きてるんだよ、この通り、生きてるんだ、間違いはねえのですからね、よっちゃん、そんなに、むずからねえでもいいや、しょうの米友だよ」
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
左様そうサ、お正さんが二十位の時だろう、四年前の事だ、だからおしょうさんは二十四の春かたずいたというものだ。」
恋を恋する人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
しょうのお話でありますが、細々しい所は面白味が薄うございますから申上げませんが、多助も山口屋方へ奉公中追々金をめ、国のいえを立てたいという精神を貫きましょうとするうち
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
……虎雄なんども自分の目でしょうの所ば見て来るがええて。
天狗外伝 斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
しょうちゃん、どうしたの?」
妖星人R (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「あんなことで、こすものじゃなくてよ。」と、しょうちゃんは、おねえさんにしかられました。ところが、その午後ごごでありました。
ねことおしるこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
しょうの肌身はそこで藻抜けて、ここに空蝉うつせみの立つようなお澄は、呼吸いきも黒くなる、相撲取ほど肥った紳士の、臘虎襟らっこえり大外套おおがいとうの厚い煙に包まれた。
鷭狩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
書割かきわりで見るんじゃねえ、しょうのものを、正でひとつ、後学のために見ておいて帰るのも話の種だ。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
多「婚礼はしょううまの刻に極めました」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「だれだい?」と、少年しょうねんびかけて、その三にんをじっと見守みまもりました。すると、一人ひとりとしちゃんで、一人ひとりしょうちゃんでありました。
町の天使 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いや、しょうのものの膝栗毛ひざくりげで、いささか気分なるものをただよわせ過ぎた形がある。が、此処ここで早速頬張ほおばって、吸子きびしょ手酌てじゃくったところは、我ながら頼母たのもしい。
雛がたり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
講釈で聞いたしん予譲よじょうとやらの出来損ないだ、おれの片腕では、残念ながらしょうのままであの女をどうすることもできねえんだ、時と暇を貸してくれたら、どうにかならねえこともあるめえが
しょうちゃんはあかいじてんしゃにのって、んだかいこをかわにながしにいきました。そのかえりに、あたらしいくわのをもらってきました。
正ちゃんとおかいこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
と当って見ると、いやつまんだつめの方が黄色いくらいでござったに、しょうのものとて争われぬ、七りょうならば引替ひきかえにと言うのを、もッと気張きばってくれさっせえで
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし、米友はしょうのままではそこへ現われて来ませんでした。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
このとき、しょうちゃんは、クロと約束やくそくしたことをおもしました。ぼくは、おまえをかわいがってやるからといったことをおもしました。
僕がかわいがるから (新字新仮名) / 小川未明(著)
この涼しさに元気づいて、半分は冗戯じょうだんだが、旅をすれば色々の事がある。駿州すんしゅうの阿部川もちは、そっくりしょうのものに木でこしらえたのを、盆にのせて、看板に出してあると云います。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しょうちゃんは、ねこのけんかでをさましたのでした。ちいさい三毛みけが、おおきなくろねこにいじめられているので、たいへんだとおもったのです。
ねことおしるこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
これで喜多八さえ一所だったら、膝栗毛をしょうのもので、太平の民となる処を、さて、杯をさしたばかりで、こういだ酒へ、蝋燭ろうそくのちらちらと映る処は、どうやら餓鬼に手向たむけたようだ。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)