梅干うめぼし)” の例文
「たしかに家にゐましたよ。でも、梅干うめぼしを貼つて、奧でうなつてゐたから、あつしがお勝手から忍び込んだのも氣がつかなかつたやうで」
最初は茶塩気ちゃじおけといって梅干うめぼし漬物つけもの、まれには小匙こさじ一ぱいのしおということもあり、そうでなくとも腹を太くするほどの多量の物はともなわずに
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「与八や——わしも永年、諸所方々を歩き廻って来たけれど、まずこの地方の梅干うめぼしほどうまい梅干はないと思うよ」
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
釣竿つりざおみたいな物の先に、稗米ひえまい握飯むすび梅干うめぼしの入ったのを一つ、竹の皮にくるんで誰か窓から吊り下げてくれた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
えらねえぞ仕事しごとりや毎日まえんちかうだ」勘次かんじ梅干うめぼしすこしづゝらした。辨當べんたうきてから勘次かんじいわしをおつぎへはさんでやつた。さうして自分じぶんでも一くちたべた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
修善寺から熱海あたみへ出て名物のポンスを買って小田原と大磯へ寄って来たが小田原の梅干うめぼしも三樽買って来た。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
主婦が仙さんの素生すじょうを尋ねかけたら、「乃公おれに喧嘩を売るのか」と仙さんは血相を変えた。ある時やるものが無くて梅干うめぼしをやったら、斯様なものと顔をしかめる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
と、芥川あくたがはさんがえいじて以来いらい、——東京府とうきやうふこゝろある女連をんなれんは、東北とうほく旅行りよかうする亭主ていしゆためおかゝのでんぶと、焼海苔やきのりと、梅干うめぼしと、氷砂糖こほりざたう調とゝのへることを、陰膳かげぜんとゝもにわすれないことつた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
二人で縁端えんばたに坐っていると、女中が蒲団を持って来たり、朝茶や梅干うめぼしを運んだりした。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「お父つぁんのは、両行李ごうりぎゅうぎゅうにつめこんであげよ。お前のは軽くいれてな、なにせ、大きい弁当箱じゃもん。梅干うめぼしは見えんほど御飯の中に押しこまにゃ、ふたに穴があくさかい」
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
梅干うめぼし幾樽、沢庵たくあん幾樽、寝具類幾行李こり——種々な荷物が送られた。御直参氏たちは三河島の菜漬なづけがなければ困るという連中であるから、行くとすぐに一人ずつ一人ずつ落伍らくごして帰って来てしまった。
旧聞日本橋:08 木魚の顔 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
疊の合せ目に藁屑わらくづがハミ出してゐるのに氣が付くと、庄兵衞はニヤリとしたよ。それから、床下から出た瓶は新らしくて梅干うめぼしの匂ひがすると言つたらう。
夏はお釜の底へ梅干うめぼし一つ入れて炊いてもあるいはおひつの底へ梅干一つ入れても持ちが大層たいそうようございます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
人夫がふきの葉やよもぎ熊笹くまざさ引かゞってイタヤのかげに敷いてくれたので、関翁、余等夫妻、鶴子も新之助君のせなかから下りて、一同草の上に足投げ出し、梅干うめぼしさい握飯にぎりめしを食う。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ひやかしたが、元来ぐわんらい衣裳鞄いしやうかばん催促さいそくではない、ホツキがひ見舞みまひたのだから、其次第そのしだい申述まをしのべるところへ……また近処きんじよから、おなじく、氷砂糖こほりざたう梅干うめぼし注意連ちういれん女性によしやうきたくははつた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
フライの付け合せ物は梅干うめぼしの煮たのだが一つってみ給え。即ち和洋混交の付け合せだ。梅干は色々の効がある。或る場合には殺虫剤になり、それから鉛毒を消す効がある。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「それ、言はないこツちやない、果して此のさいも味噌漬だ。おばあさん、大きな野だの、奥山へ入るには、梅干うめぼしを持たぬものだつて、宿の者が言つたつけ、うなのかね、」と顔を上げて又みまもつたが
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
繰返くりかへすやうだが、それが二日ふつかで、三日みつかひるすぎ、大雨おほあめよわてて、まだ不安ふあんながら、破家やぶれや引返ひきかへしてから、うす味噌汁みそしる蘇生よみがへるやうなあぢおぼえたばかりで、くわんづめの海苔のり梅干うめぼしのほかなんにもない。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
梅干うめぼし煮方にかた 春 第五十一 水道の水
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「よう、買っとくれよ、お弁当は梅干うめぼしいからさ。」
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
梅干うめぼしこう 春 第五十 梅干の功
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)