)” の例文
春の頃野山の樹木きゞの下は雪にうづもれたるもこずゑは雪のきえたるに、シガのつきたるは玉もて作りたるえだのやうにて見事なるものなり。
やれ、やれ、昼寝の夢が覚めて見れば、今日はまた一段と暑いようじゃ。あのまつふじの花さえ、ゆさりとさせるほどの風も吹かぬ。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
うめ手洗鉢ちょうずばちじゃあるまいし、乃公を叩いたって森川さんが帰って来るものか。けれども此は一のかなしき過失に外ならない。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ふふみの、まだなづむの、うぐひすの鳴まねびをる。頬白のふりまねびをる。しづゆり、ゆり遊びをる。移り飛びをる。
(新字旧仮名) / 北原白秋(著)
菜の花、豆の花ならば戯るるすべもあろう。偃蹇えんけんとして澗底かんていうそぶく松がには舞い寄る路のとてもなければ、白き胡蝶こちょうは薄き翼を収めて身動きもせぬ。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
道に差出でし松がより怪しき物さがれり。きも太き若者はずかずかと寄りて眼定めて見たり。くびれるは源叔父なりき。
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
月の事に就いて詠みました歌でございますが、雲を風で吹払った跡は、松がに渡る風の声のみで、光々明々こう/\めい/\として月を見ている心になれば、年中間違いはなきものゆえ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
彼は二部屋ある二階の六畳の方に古いきりの机を置いて、青年時代から書きためた自作の『まつ』、それに飛騨ひだ時代以来の『常葉集とこわしゅう』なぞの整理を思い立った時であるが
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
が、さらに一層我々の注意をひくのは、浦島の常世の国が海中から天上へ移され、つみの化してなった柘媛つみひめも吉野の山の仙女から羽衣で飛ぶ天女に変化させられたことである。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
庭の松がつるしたる、ほの暗き鐵燈籠かなどうろうの光に檐前のきさきを照らさせて、障子一重の内には振鈴の聲、急がず緩まず、四曼不離の夜毎の行業かうごふに慣れそめてか、まがきの蟲のおどろかん樣も見えず。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
上り込むと、これが狭い廊下を一つ置いた隣座敷へ陣取って、危いわ、と女の声。どたんとふすまつかる音。どしん、と寝転ぶ音。——くすのき正成まさしげがーと梅ヶ手水鉢ちょうずばちで唄い出す。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「あんたを、あの外国人が、ぜひうめに連れて来ておくれと言うてなさるが——」
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
磐代いはしろ浜松はままつむす真幸ささきくあらばまたかへりむ 〔巻二・一四一〕 有間皇子
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
無間むけんの鐘や、うめ手水鉢ちょうずばちじゃああるめえし、そんなにおめえの力で——」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
五十を少し越した筋張った神経質な武家、一刀をげて、まつのお組と、縁先の平次を当分に見比べた姿は、苛斂誅求で、長い間房州の知行所の百姓を泣かせた疳癖かんぺきは充分にうかがわれます。
梅雨晴つゆばれの日はわかこえきらきらとおん髪をこそ青う照りたれ
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
花のにいとど心をしむるかな人のとがむる香をばつつめど
源氏物語:32 梅が枝 (新字新仮名) / 紫式部(著)
柳のもて縛りつけ賠償とりて放ちにき。
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
いろもかぐろき波の上に松がたるる
駱駝の瘤にまたがつて (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
雪は松がうへにつもつて悲しい
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
うち渡す三〇 やがは三一なす
さこそはひと野木のぎ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
松がのしづくにぬれて
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
いだきてただ一人
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
春の頃野山の樹木きゞの下は雪にうづもれたるもこずゑは雪のきえたるに、シガのつきたるは玉もて作りたるえだのやうにて見事なるものなり。
ふふみの、まだなづむの、うぐひすの鳴まねびをる。頬白のふりまねびをる。しづゆり、ゆり遊びをる。移り飛びをる。
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
おゝ/\乱暴狼藉らんばうらうぜきで、飛石とびいしなぞはいぬくそだらけにして、青苔あをごけ散々さん/″\踏暴ふみあらし、折角せつかく塩梅あんばいこけむした石燈籠いしどうろうたふし、まつつちまひ、乱暴らんばうだね……何方どちらからお入来いでなすつた。
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
松がに隔てられ、大屋根の陰になり、建連たてつらなる二階家に遮られて、男坂の上からも見えず、矢場が取払われて後、鉄欄干から瞰下みおろしても、直ぐ目の下であるのに、一棟の屋根も見えない
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
五十を少し越した筋張つた神經質な武家、一刀をげて、松がのお組と、縁先の平次を當分に見比べた姿は、苛斂誅求かれんちうきうで、長い間房州の知行所の百姓を泣かせた疳癖かんぺきは充分にうかゞはれます。
鬱蒼蟠居うつさうばんきよの古木とある首尾の松は、清元「梅の春」に首尾しゆびまつ竹町のとうたはれてゐるが、この歌詞はたつた一つ例にあげただけで、首尾の松は下谷根岸の時雨の松(おぎやうの松)と共に
花火と大川端 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
芽を吹く今の幹なれば、通わぬ脈の枯れの末に、きりの力のとがれるをさいわいと、記憶の命を突きとおすは要なしと云わんよりむしろ無惨むざんである。ジェーナスの神は二つの顔に、うしろをも前をも見る。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まつ」とは、その庭の植樹うえきから思いついて、半蔵が自分の歌稿の題としているくらいだ。しかしそれらの庭にあるものよりも、店座敷の床の間に積み重ねてある書物が吉左衛門の目についた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
おなじを分きて染めける山姫にいづれか深き色と問はばや
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
高野川河原のかなた松がにかはせみりぬ知る人の家
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
沙羅さらのみづに花さけば
沙羅の花 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
さこそは獨り野木の
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
は 天をへり。
をちこちの小竹ささのむら笹、柿もみぢ、梅がの蔦、とりどりに色に出づれど、神無月すゑの時雨に濡れ濡れて、その葉枯れず、落葉せず、透かず、薄れず
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
萱門かやもんつてめてあるのを無理に押したから、かんぬきけ、とびらはずみになかころがりみ、泥だらけになつて、青苔あをごけ下草したくさあらし、すべつてころんで石燈籠いしどうろう押倒おしたふし、まつるといふさわぎで
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
かばかりは風にもつてよ花のに立ち並ぶべきにほひなくとも
源氏物語:31 真木柱 (新字新仮名) / 紫式部(著)
独居ひとりいのねぶり覚ますと松がにあまりて落つる雪の音かな
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
生けたるは茶の花ひと
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
の 末葉うらば
男木をぎ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
枯れ枯れの木のを透きて、月はただ遠くあらはに、落葉また風に吹かれて、へうへうとかぎりも知らず。いつの日かまたと還らむ、いつの世か久しかりちふ。
黄金こがねいろづく梅が
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
小木こぎ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
枯れ枯れの木のを透きて、月はただ遠くあらはに、落葉また風に吹かれて、へうへうとかぎりも知らず。いつの日かまたと還らむ、いつの世か久しかりちふ。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
男木をぎ
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
春鳥のに揺る声の、ゆく水のかがよふ音の、朝風の松のひびき、夕風の小竹ささのさゆれの、おのづから我よあはれと、あはれにもれて、しらべて、あるべきものを。
(新字旧仮名) / 北原白秋(著)