がけ)” の例文
母が一人でめしいたりおさいこしらえたりして五人の小供の世話をしなければならぬから、中々教育の世話などは存じがけもない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
なかんずく灰吹はいふきの目覚しさは、……およそ六貫目がけたけのこほどあって、へり刻々ささらになった代物、先代の茶店が戸棚の隅に置忘れたものらしい。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
主人の娘が貸してくれと云うものを出来ぬとは義理ずくでかんし、親切に世話をしてくれかたじけない、多分に礼をしたいが、帰りがけであるからのう
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
浮世うきよかゞみといふもののなくば、かほよきもみにくきもらで、ぶんやすんじたるおもひ、九しやくけん楊貴妃ようきひ小町こまちくして、美色びしよくまへだれがけ奧床おくゆかしうてぎぬべし
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うたれ夫にて概略およそわかつたり先月せんげつ初旬はじめ了源寺の所化しよげいつはりたる坊主はまさしく其の願山で有うと何樣なにさま其方の別懇べつこんにする曲者ならん此儀はどうぢやと思ひがけなき事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
また、両国橋のたもとに、飛入とびいり剣術の小屋がけがあった。見物人のうちに交じっていた次郎右衛門忠明が、時折、苦笑をするのを見て、その興行者たる自称天下無双の兵法者が
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
珠運しゅうんも思いがけなく色々の始末に七日余り逗留とうりゅうして、馴染なじむにつけ亭主ていしゅ頼もしく、おたつ可愛かわゆく、囲炉裏いろりはたに極楽国、迦陵頻伽かりょうびんが笑声わらいごえむつまじければ客あしらいされざるもかえって気楽に
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
女はやがて帰つてた。今度は正面が見えた。三四郎の弁当はもう仕舞がけである。したを向いて一生懸命にはしを突込んで二口三口ふたくちみくち頬張つたが、女は、どうもまだもとの席へ帰らないらしい。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
草苅に小さい子や何かゞまぐさを苅りに出て、帰りがけに草の中へしるしに鎌を突込つっこんで置いて帰り、翌日来て、其処そこから其の鎌を出して草を苅る事があるもので
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
胸をこはぜがけにて、うしろ折開おりひらいた衣紋着えもんつきぢや。小袖こそでと言ふのは、此れこそ見よがしで、かつて将軍家より拝領の、黄なるあやに、雲形くもがた萌葱もえぎ織出おりだし、白糸しろいとを以てあおい紋着もんつき
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
偖も九助は江戸の用向とゞこほりなく相辨あひべんじ歸りがけに又々御殿場てんば立寄たちより伯父九郎兵衞の親子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あとから聞いたら小僧はこのランプの灯までがけをして、そこで自分達を待ってたんだそうだ。おおいと云う声も小僧やあと云う声も聞えたんだが返事をしなかったと云う話しだ。偉い奴だ。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
男女ふたりは狼狽して、寝台のがけねのけた。金蓮きんれんは白いはぎもあらわに、下袴はかま穿く。ひもを結ぶ。男の西門慶も度を失って、彼にも似気なく、寝台の下へ四ツん這いに這い込んで行くしまつ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つゞいてあらはれるが例物れいぶつさ、かみ自慢じまん櫛卷くしまきで、薄化粧うすげしようのあつさりもの半襟はんゑりつきのまへだれがけとくだけて、おや貴郎あなたふだらうではいか、すると此處こゝのがでれりと御座ござつて、ひさしう無沙汰ぶさたをした
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
泊りがけで五六軒って来ようと思う、牛込は少し面倒で、今から行っちゃア遅いから明日あした行く事にしようと思うが、小日向のはずるいから早く行かないとなあ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
うづむばかり又忠兵衞は忠相ぬしが活機くわつき明斷めいだんぼんならでいまあらためて婚姻こんいんむす𫥇人なかうどとまで成給はんと述給のべたまはるの有難さは是のみならず和吉お金も思ひがけなきお奉行のお聲掛りは一世のはれ巨萬きよまんの金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
夫人 人の生死いきしには構いませんが、切腹はさしたくない。私は武士の切腹は嫌いだから。しかし、思いがけなく、お前の生命いのちを助けました。……悪い事ではない。今夜はいいだ。それではお帰り。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
文治が友之助を助けた翌日、お村の母親の所へ掛合かけあいに参りまして、帰りがけに大喧嘩の出来る、一人の相手は神田かんだ豊島町としまちょうの左官の亥太郎いたろうと申す者でございます。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
へえ、どうもおもがけないところ旦那だんなにお目にかゝつたぢやアないか。乙「へえ旦那だんな、誠にしばらく、どうもくおでなすツた。岩「なにくもない……こゝに川がるね。 ...
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
叔母には多分の手当をして上げようと申しましたが、堅くって中々受けませんので無理やりに持たして田舎へ帰し、時々泊りがけに遊びに来て下さいと親類同様にして帰したから
此方こちらでは御飯が済んだから帰りがけに花車のいえこうというので急いで出る、お隅も安田が来ているのを認めましたから気味が悪く早く帰ろうと思うので、奥から出て廊下へ来ると
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あの寄生木やどりの出た大木の方に附いてお出でなさいよ……あゝまア思いがけなく清兵衞さんがお出でなすって、一晩お泊め申してゆっくり話を聞きたいが、お急ぎと見えてハイもう影も見えなく成った
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お泊りがけのお方で、何処どこなんというしっかりとした何かしょうがないと、お寺も中々やかましくって請取うけとりませんが、わたくしどもの親類か縁類えんるいの人が此方こっちへ来て、死んだような話にして、どうか頼んで見ましょう
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)