一緒いっしょ)” の例文
一緒いっしょにいる時は可憐さが不足を補って、それでも済むでしょうが、家を離れている時に用事を言ってやりましても何ができましょう。
源氏物語:02 帚木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
とにかくみんなは山男をすぐ食堂しょくどう案内あんないしました。そして一緒いっしょにこしかけました。山男がこしかけた時椅子いすはがりがりっと鳴りました。
紫紺染について (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いやらしい事なぞはちっとも口にしなかったが、胸と胸との談話はなしは通って、どうかして一緒いっしょになりたい位の事はたがいに思い思っていたのだ。
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
きみ、ちょっとたまえ。きみはずいぶんっともないね。だから僕達ぼくたちきみっちまったよ。きみ僕達ぼくたち一緒いっしょわたどりにならないかい。
それ等が交尾こうびをしながら、庇のところまで一緒いっしょに転がって来ては、そこから墜落すると同時に、さあと二叉ふたまたに飛びわかれているのだった。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
答『竜神りゅうじんにとりて、一緒いっしょむ、まぬは問題もんだいでない。竜神りゅうじん生活せいかつ自由自在じゆうじざい人間にんげんのようにすこしも場所ばしょなどにはしばられない。』
第七 茶粥ちゃかゆ と申すのはいたって淡泊なもので、これは最初によくほうじた番茶を袋に入れて水と一緒いっしょによく煎出にだして一旦いったんその袋をげます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
こうして、ちいさなたにしから出世しゅっせしたおむこさんは、たにしの長者ちょうじゃとよばれて、やさしいおよめさんと一緒いっしょに、すえながくさかえましたと、さ。
たにしの出世 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
わたしが今話の序開じょびらきをしたその飛騨の山越やまごえをやった時の、ふもとの茶屋で一緒いっしょになった富山とやまの売薬というやつあ、けたいの悪い、ねじねじしたいや壮佼わかいもので。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ところがお茶がむと、父はわたしとうでを組んで、一緒いっしょに庭へ出て行きながら、わたしがザセーキン家で見たことを、逐一ちくいちわたしに物語らせた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
ある日の事、一緒いっしょに近所の床屋とこやまできた柴山とかたをくんで、その店に入って行くと、上原がもう来ていて、娘さんとなにか笑い話をしています。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
この位美しい女に、誘惑ゆうわくされた以上、男として手をつくねていることはないと思ったので、一緒いっしょた。割合い広い家なのに、家人は一人もいない。
女強盗 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
○わたくし達は、外でお友達と一緒いっしょの時は「ノシちゃえ」なぞと随分ずいぶん、男のような言葉も使ってわあわあ騒ぐ。
現代若き女性気質集 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「お母さん、ぼくの考えではね、お母さんもぼくと一緒いっしょ豆腐とうふを作って、それから伯父さんの回り場所を売りにでてください、二人ふたりでやればだいじょうぶです」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
麦畑や、地蔵や、眼と口を一緒いっしょにあけた女の顔や、人の声や、まぐろしくけて来てはうしろへ飛ぶ。機関の響は心臓の乱拍子らんぴょうし、車は一の砲弾ほうだんの如くひゅうしゅっうなって飛ぶ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
みょうなことには、遠きもの日々にうとしで、日夜、一緒いっしょに暮している与平へ対する愛情の方が、いまでは色いものとなっているだけに、千穂子はその情愛になやむのである。
河沙魚 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
車で一緒いっしょに都を一巡いちじゅんしながら色々話をうけたまわろうと云う。孔子は欣んで服を改め直ちに出掛けた。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
中学校も高等学校も大学も一緒いっしょだったが、その友人は文科にいた。携わっている方面も異い、気質も異っていたが、彼らは昔から親しく往来し互いの生活に干渉し合っていた。
雪後 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
袖子そでこほうでもよくその光子みつこさんをって、ひまさえあれば一緒いっしょがみたたんだり、お手玉てだまをついたりしてあそんだものだ。そういうとき二人ふたり相手あいては、いつでもあの人形にんぎょうだった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あっても相手は頑是がんぜないこいさんである上に累代の主家のお嬢様である佐助としてはお供の役をおおせ付かって毎日一緒いっしょに道を歩くことの出来るのがせめてものなぐさめであっただろう。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
私が病気をて遣った娘の親と宿の主人も一緒いっしょに参ったのですが、その人達がその官吏をあちらの方へ呼んで行って、あの人は法王の侍従医であるというような事を告げたらしい。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
それから私の本郷の寓居ぐうきょへ立ちよって、一緒いっしょに発送をするのを例とせられていた。
左千夫先生への追憶 (新字新仮名) / 石原純(著)
不思議な挙動に目をみはって、っと見詰めては、父親が泣き出すと、自分も一緒いっしょにしくしくと、何時までも泣き続けていた、黄昏たそがれの灯のない裏長屋の中のあまりにわびし気な風情ふぜいだった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
この頃清原の息子むすこや小野の息子達と一緒いっしょになって、やれ「和歌」を作ってみたり、「恋物語」を書いてみたりしているらしいけれど、あれだけはお父さんどうしても気に掛ってしかたがないな。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
真直まっすぐ行けば基隆キールンまで行きますよ。基隆から船で内地へ行かれるのですか。それとも別に目あてのない気紛れの旅行ですか。それなら、どうです? 僕も旅行家ですが僕と一緒いっしょに二八水で降りては。
蝗の大旅行 (新字新仮名) / 佐藤春夫(著)
彼はお三時の茶を植木やと一緒いっしょにしながら言った。
生涯の垣根 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
私も一緒いっしょにああやって泣きたい。
秋風 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
お母さんは、ものの二つのひつと、達二たつじの小さな弁当べんとうとを紙にくるんで、それをみんな一緒いっしょに大きなぬの風呂敷ふろしきつつみました。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
可哀かわいそうにこの子家鴨こあひるだって、もとの家鴨達あひるたちすこ元気げんきをつけるようにしてさえくれれば、どんなによろこんでみんなと一緒いっしょくらしたでしょうに!
「四番、もっと手を振って」と注意され、ぼくは勢いよくうでを振り上げようとすると、可笑おかしなことに、手と足と一緒いっしょに動き、交互こうごにならないのです。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
それは六月の半ばころ、私がとうげから一緒いっしょに下りてきた二人の子供たちと別れた、あの印象の深い小さな橋であった。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
わたしの折角の控え目な磊落さも、ものものしい態度も、その瞬間しゅんかんに消しとんでしまったばかりか、それと一緒いっしょに、うじうじした当惑の感じもなくなった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
「あたしは、とても、縹緻好みなんですわ。夫なんかには。そうでないと一緒いっしょにご飯も喰べられないんです」
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
一緒いっしょに里のおとうさんおかあさんの家へ行くときにはおよめさんはおむこさんをじぶんのおびのあいだに、ちょこなんとはさんで、なかよく話しながら行きました。
たにしの出世 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
文子はこういったがすぐ「私も一緒いっしょにいくわ、あそこに大きな犬がいるからおいはらってちょうだいね」
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
で、やがて娘はみち——路といっても人の足のむ分だけを残して両方からは小草おぐさうずめている糸筋いとすじほどの路へ出て、そのせまい路を源三と一緒いっしょに仲好く肩をならべて去った。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
あれは独逸ドイツほうから新荷しんにいたばかりだという種々いろいろ玩具おもちゃ一緒いっしょに、あの丸善まるぜんの二かいならべてあったもので、異国いこく子供こども風俗なりながらにあいらしく、格安かくやすで、しかも丈夫じょうぶ出来できていた。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私達は一緒いっしょになって間もなかったし、多少の遠慮えんりょが私をたしなみ深くさせたのであろうか、その男の白々しらじらとした物云いを、私はいつも沈黙だまって、わざわざ報いるような事もしなかった。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
私が二十七妻が二十一の春東京で一緒いっしょになり、東京から逗子、また東京、それから結婚十四年目の明治四十年に初めて一反五畝の土と一棟ひとむねのあばら家を買うて夫妻此粕谷に引越して来ました。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
じつは私はその日までもし溺れる生徒ができたら、こっちはとても助けることもできないし、ただんでいって一緒いっしょに溺れてやろう
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
日本人のコックさんが、広島弁丸出しのおくさんと一緒いっしょに、すぐ、久しりの味噌汁みそしるで、昼飯をくわしてくれました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
そしていかにも易々やすやすあししたみずけて、見事みごとおよまわるのでした。そしてあのぶきりょうな子家鴨こあひるもみんなと一緒いっしょみずに入り、一緒いっしょおよいでいました。
大抵たいてい光一は五杯の飯を食べるが文子は三杯であった、5対3ではあるが、光一の方はスピードが速いのでほとんど同時におしまいになる、それから一緒いっしょに家をでる。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
どうぞ、可愛がってやってちょうだい。まだ野育ちだけれど、気だてはいいのよ。ネスクーチヌィ公園でも見せてやって、一緒いっしょに散歩して、目をかけてやって下さいね。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
「あたくし、久しく行水しないから、この綺麗きれいな水へ入って汗を流したいのよ。あたりにだれもいませんから、あなたも一緒いっしょに入ってうでつかまらしといて下さらない、こわいから」
鯉魚 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ハハハ、これではおたがいに浮ばれない。時に明日あすの晩からは柳原やなぎはらの例のところに○州屋まるしゅうや乾分こぶんの、ええと、だれとやらの手で始まるそうだ、菓子屋のげん昨日きのうそう聞いたが一緒いっしょに行きなさらぬか。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
やっと彼女が花屋の絵を描き上げたので、次の絵を描く場所をさがすために、或る晴れた朝、私は彼女と一緒いっしょに、すこし遠いけれど、サナトリウムの方へひさしぶりで出かけてみることにした。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
わしおまえは六合の米よ、早くイッショ(一緒いっしょ、一しょう)になれば好い」
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「お前も一緒いっしょに来いや、こまい者は寝とらんかッ!」
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
げるならいまのうちだと私たちは二人一緒いっしょに思ったのです。その証拠しょうこには私たちは一寸ちょっとを見合せましたらもう立ちあがっていました。
二人の役人 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)