黒縁くろぶち)” の例文
無髭無髯むしむぜんの顔に、細い黒縁くろぶち眼鏡めがねをかけ、脣が横に長いのを特徴の、有名なる私立探偵帆村荘六ほむらそうろくだった。一頃から思えば、この探偵も深刻にふけて見える。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
新聞は皆黒縁くろぶちだ。不図新聞の一面に「睦仁むつひと」の二字を見つけた。下に「先帝御手跡」とある。孝明天皇の御筆かと思うたのは一瞬時いっしゅんじ、陛下は已に先帝とならせられたのであった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
街の角々には黒縁くろぶち取りたる張紙はりがみに、この訃音ふいんを書きたるありて、その下には人の山をなしたり。新聞号外には、王の屍見出だしつるをりの模様に、さまざまの臆説おくせつ附けて売るを、人々争ひて買ふ。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)