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黒皮
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くろかわ
さても
伊那丸は、
小袖のうえに、
黒皮の
胴丸具足をつけ、そまつな
籠手脛当、黒の
陣笠をまぶかにかぶって、いま、馬上しずかに、
雨ヶ
岳をくだってくる。
紺糸の
黒皮のよろい、白地きんらんの陣羽織、かぶとは鹿の
角の前立ち、それを背投げに負い、
頭は、なお癒えぬ戦傷を、まるで
白頭巾のように、頬へかけて、巻いていた。
清浄な
砂をしきつめて
塵もとめない
試合場の
中央に、とみれば、
黒皮の
陣羽織をつけた
魁偉な男と、
菖蒲いろの陣羽織をきた一名の若者とが、西と東のたまり
場からしずしずと
歩みだしている。