うぐい)” の例文
うぐいはやごりの類は格別、亭で名物にする一尺の岩魚いわなは、娘だか、妻女だか、艶色えんしょく懸相けそうして、かわおそくだんの柳の根に、ひれある錦木にしきぎにするのだと風説うわさした。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鮎、うぐいはやなどが淵の中層で、ぐうぐうやっている。魚類のことであるから、いびき声は聞こえないが、尾も鰭も微動だにさせないで、ゆるやかに流れる水に凝乎じっとしているのである。
飛沙魚 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
うぐい蓴菜じゅんさいの酢味噌。胡桃くるみと、飴煮あめにごりの鉢、鮴とせん牛蒡ごぼうの椀なんど、膳を前にした光景が目前めさきにある。……
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小鳥は比羅びらのようなものに包んでくれた。比羅は裂いて汽車の窓から——小鳥は——包み直して宿へ着いてから裏の川へ流した。が、眼張魚めばるは、ひきがえるだとことわざに言うから、血の頬白は、うぐいになろうよ。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)