魚狗かわせみ)” の例文
南の岡のうえをもかりもかりと浮いてゆく銀いろの雲に見とれてるとき一羽の魚狗かわせみが背なかを光らせながら ぴっ ぴっ と飛んでいった。
島守 (新字新仮名) / 中勘助(著)
これとだいたい同じ話が、奄美大島のとなりの喜界島きかいじまという島にもあった。ただしここでは啄木鳥の代りに、いっぽうを魚狗かわせみだったといっている。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
岩頭から横にのり出した木の枝には魚狗かわせみが一羽、じっと斜に構えて動きそうにもなかったが、突然弦を離れた翡翠ひすいの矢のように、水を掠めて一文字に飛んで行った。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
あるいはそのいっぽうをかもめといい、南の島では魚狗かわせみだともいうが、かたいっぽうはかならず雀ときまっている。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
水色と泥色に染めわけられた波模様を手のひらにのせてみながら戻って机のうえにならべておく。どん栗と貝殻と杉の花とでにぎやかになった机に頬杖をついてぼんやりと魚狗かわせみのことを考えはじめた。
島守 (新字新仮名) / 中勘助(著)
次第に青い衣の里馴れた魚狗かわせみが、最も多くソニと呼ばれるようになったとも見られる。