魔風まかぜ)” の例文
ピューッ……ピューッと、いよいよつの魔風まかぜの絶え間に、近くのすりばん、遠くの鐘、陰々と和して町々の人を呼びさます。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いや、拙者が現われたのではなく、この短笛——この一管の曲者くせもの魔風まかぜを吹きこんでしまいました
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
十八九ばかりの書生風の男で、浴帷子ゆかた小倉袴こくらばかまを穿いて、麦藁むぎわら帽子をかぶって来たのを、女中達がのぞいて見て、高麗蔵こまぞうのした「魔風まかぜ恋風」の東吾とうごに似た書生さんだと云って騒いだ。
心中 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そして、まくのごときまッ黒な怪物かいぶつが、日輪にちりんの光を雄大ゆうだいつばさのかげにかくし、クルルッ——ときあがっていった栴檀刀せんだんとうを目がけて、どこからかまるで魔風まかぜのようにけおりてきたかと見ると
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)