鬚男ひげおとこ)” の例文
どちらも大森署の巡査であるが、一人は猪村いむらといって丸々したイガ栗頭。大兵たいひょう肥満の鬚男ひげおとこで、制服が張千切はちきれそうに見える故参こさん格である。
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ここに桑盛次郎右衛門くわもりじろうえもんとて、隣町の裕福な質屋の若旦那わかだんな醜男ぶおとこではないけれども、鼻が大きく目尻めじりの垂れ下った何のへんてつも無い律儀りちぎそうな鬚男ひげおとこ
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
六尺豊かの筋骨たくましい鬚男ひげおとこで、髪は結髪けっぱつにした上から、手拭で頬かむりをし、眼先なかなかものすごく、小刀を前半まえはんにし、大刀を後ろの柳の木へ、戸板を結びつけたしきりへ立てかけて置いて
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
僕と一緒に居残った奴は、島根県の何とかいう三十ばかりの鬚男ひげおとこだったが、広い教室のズット向うとこっちに離れて製図を遣るんだ。……お互に顔を見交みかわして泣き笑いみたいな顔をし合ったっけ。
焦点を合せる (新字新仮名) / 夢野久作(著)