)” の例文
失敗しまった! 妻の不断に似合わず、いやに気のついたことをしたもんだ。これじゃ、ゴルフに行ったと云うんじゃなかった!)と、後悔したがも及ばず。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
沈黙を守るにかず、無用の言を吐くとも舌に及ばずで、たちまち不測の害をかもすことになる、注意すべきは言葉であるという道徳の箴言しんげんに類した句である。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
阿園が問いに何心なくさようと答えつ、後にてハッとおどろきたれども舌に及ばざりき、女房はき立てり
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
「え?」と小野さんは俄然がぜんとして我に帰る。空をかすめる子規ほととぎすの、も及ばぬに、降る雨の底を突き通して過ぎたるごとく、ちらと動けるあやしき色は、く収まって、美くしい手は膝頭ひざがしらに乗っている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
も舌に及ばず、三宅君地団駄ふんだが、後の祭で、及ばない。
探偵の巻 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
我にあらかじめ約あればも及ばず、今はたこれをいかんせむ。
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)