馘首かくしゅ)” の例文
万一この脚の見つかった日には会社も必ず半三郎を馘首かくしゅしてしまうのに違いない。同僚どうりょうも今後の交際は御免ごめんこうむるのにきまっている。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それは伊藤や須山の影響下のメンバー、新しい細胞に各職場を分担させて一斉いっせいに「馘首かくしゅ反対」の職場の集会を持たせることだった。
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
ソヴェトでは働くすべての女が、姙娠して五ヵ月以後になったとき馘首かくしゅされることは絶対に禁じられていたから。
道標 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
君のその論調でやられたのならば、今まで、一時の入用のために、自分の預金を引き出すために、どのくらい多くの労働者を、君は馘首かくしゅしたことになるだろう。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
ついには主人の金品を胡魔化ごまかす、仕入部と工場に忌わしい連絡が結ばれる、とうとう陥る所までおちて馘首かくしゅされ、昨日の店員も今日からは他人となり縁が絶えてしまう。
ところが、責任を負い得ぬような状態の時に、とんでもない失策を招いて、幾度も幾度も戒告を受けた末、とうてい長くは信用の置けない人間として、馘首かくしゅせられてしまったのである。
葉書一枚で馘首かくしゅされた社員は皆カンカンになって結束して沼南に迫った。
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
あの事件に関係した十五六人をみんな馘首かくしゅするだろうか?
工場新聞 (新字新仮名) / 徳永直(著)
十分馘首かくしゅの口実にも保証金没収の理由にもなるのだった。
勧善懲悪 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
『しかし、私はまだ、馘首かくしゅするとも退職せよともいいはしないんですよ。ただそれは例のないこった、今まではこういう仕来たりであったといったまでですよ』
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
前に私に報告してある馘首かくしゅがこの三十一日と見せかけて実は二十九日にやるらしいこと、パラシュートやマスクの引受高から胸算してみると、それが丁度当っていた
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
強制調停に不服なところへ馘首かくしゅ公表で、各車庫は再び動揺しはじめているのであった。
乳房 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
波田は、ボースンを、月二割も利子をとるので、船長の模型ぐらいに評価していたのであったが、彼が「馘首かくしゅ」されたことを聞いて、急に同情者になってしまった。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)