餅肌もちはだ)” の例文
半ば裸体で、滑っこい餅肌もちはだをしていた。それが、袂を捉え、手首を取り、はては首っ玉にかじりついて来た。どうにも出来なかった。
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
餅肌もちはだの大年増、搗き立てのやうに湯氣の立つのが、素つ裸で井戸端へ縛られてゐたとしたら、どんなもんです親分」
要するに貴方の書き方は絹漉きぬごし豆腐のように、又婦人の餅肌もちはだのように柔らかなのです、上部ばかり手触りが好いのかと思うと、中味迄ふくふくしているのです。
木下杢太郎『唐草表紙』序 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
蜘蛛は薄紅色の乳房を二本の足でとらえて居るのだ。むっちりと、粘着する様な下腹の白い餅肌もちはだには一人の唐子からこがその乳房を求めて、小さな両手を差し上げて居る。童子どうじも裸であった。
刺青 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
ぶよぶよな餅肌もちはだだった。そこで、小一条の左大臣は、夏まけのおたちといわれ、宮中の定評にもなっている。当人もそれをよいことにし、よほどな政務でもないかぎり、真夏の参内はめったにしない。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)