食意地くいいじ)” の例文
食意地くいいじのきたなさに、それ貰はうか、と答ふ。母は羊羹を持ち来りて小刀にて切る。二切を食ふ。母も食ふ。時計十二時を打つ。
明治卅三年十月十五日記事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
地蔵だって食意地くいいじが張ってるから牡丹餅で釣れるだろうと思ったら、少しも動かないんだって。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「まあ、あなた、……そんなに食意地くいいじをおはりになるものではありませんわ」
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「この野郎、よくよく食意地くいいじが張っていやがる」
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかし何だか口がさびしいと見えて、しきりに縄暖簾なわのれんや、お煮〆にしめや、御中食所おちゅうじきどころが気にかかる。相手の長蔵さんがまた申し合せたように右左とのぞき込むので、こっちはますます食意地くいいじが張ってくる。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)