音痴おんち)” の例文
僕んところは親のだいから音痴おんちなんです。(語調をかえて)何か御用? 奥田先生なら、ついさっき帰ったようですよ。
春の枯葉 (新字新仮名) / 太宰治(著)
馬鹿の宇八といふのは、町内の厄介者、本人は決して馬鹿ではないと威張るのですが、調子が變で、藪睨やぶにらみで、音痴おんちで、何んとなく釘が一本足りない男。
音痴おんちの私が、うたうことのうまい道理はないが、三十をすぎてから、偶然の動機で、正派薩摩琵琶の師匠と知り合い、正派の豪壮な階調が、ことごとく文章
≪花は咲くのになぜ私だけ、二度と春みぬ定めやら≫と音痴おんちの歌をくり返しては口ずさみ、薄暗い廊下ろうかを歩いてゆくと、向うの端から、仄白くあなたの姿がうかんできました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
オリムピック応援歌おうえんか、さては浪花節なにわぶしに近代詩といった取り交ぜで、興がわくままに大声はりあげ、しかも音痴おんちはこの上なしというのですから、他人には見せも聞かせもしたくない
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
身も心も浮々うきうきしていて、普段ふだん音痴おんちのぼくでも、ひどく音楽的になれたのでしょう。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)