霉爛ばいらん)” の例文
周囲は草原であるのに、此処ここだけが花崗岩の霉爛ばいらんした細沙と粘土との露出地である為に、この驚くき霜柱を生じたものと想われる。
秋の鬼怒沼 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
その雪には花崗の霉爛ばいらんした砂が黄粉きなこのようになって、幾筋となくこぼれている、色が桃紅なので、水晶のような氷の脈にも、血管が通っているようだ、雪の断裂面は山から吹き下す風のためであろう
槍ヶ岳第三回登山 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
花崗岩が錆色に霉爛ばいらんして、大きな磊塊をなしたり、砂泥になったりする所を、乗り越えはいあがって、煙の源へ出る。青草葺きの、虫の巣めいた小屋が一つ見つかった。この頃来た人の遺物であろう。
ある偃松の独白 (新字新仮名) / 中村清太郎(著)
この辺の土質は花崗岩の霉爛ばいらんした砂地である為に、雨は降っても道はぬからない。路傍の草なども綺麗に刈り払われてあった。
磊磈らいかいたる熔岩から成る火山が、幾多の年月を経て、岩石霉爛ばいらんの結果、秀麗なる外観を呈するに至ったなどと、曖昧なことは書かずともあるきものを
木曽駒と甲斐駒 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
地図には表わしてないが西側から喰い込んだ危いガレが二つばかりある、其縁を辿ると下から吹き上げる風に、霉爛ばいらんした粉のような黄色の細砂が舞い上って目もあけず息もつけない
美ヶ原 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
其東の尖峰の後から雲が湧き上っては鋭い鋒先にかれている。随分高く見える。ザラザラに霉爛ばいらんした白砂の上をすべりながら急な道を下り切ると一ノ瀬の人家の前に出た。十一時である。
奥秩父の山旅日記 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
此辺は一体に水苔の床であるらしく、二尺近く掘っても土は出なかった。大きな池から南に下ると三日月形の大残雪がある。そこだけは花崗岩の霉爛ばいらんした砂地で、雪消の跡にも草は生えない。
利根川水源地の山々 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
可成り水量はあるが、水は幾筋にも岐れて大きな岩の間を流れているので、膝も濡らさず徒渉としょうして右岸の沙地すなじを暫く辿った。樺や深山榛などの若木が霉爛ばいらんした沙の間に痩せた茎を培っている。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)