障礙しやうがい)” の例文
私は母のお蔭で、東京大学に籍を置くまでになつたが、種々の障礙しやうがいのために半途で退学した。私は今其障礙を数へて、めめしい分疏いひわけをしたくは無い。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
丁度船が漏斗の壁に引つ掛かつてゐる工合が、底の方を覗いて見るに、なんの障礙しやうがいもないやうな向になつてゐたのでございます。船は竜骨の向に平らに走つてゐます。
うづしほ (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
血縁の者はいま邪魔なく、障礙しやうがいなくして慟哭どうこくし得るのである。僕は布団をかぶりながら両眼に涙のくのをおぼえてゐた。間もなく雞鳴けいめいがきこえ、暁が近づいたらしい。
島木赤彦臨終記 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
司馬温公曰「我胸中人に向うて云はれざるものなし」と、この處に至つては、天地を證據といたすどころにてはこれなく、即ち天地と同體なるものなり。障礙しやうがいする慈悲は姑息にあらずや。
遺訓 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
貴嬢との友誼いうぎの上に何の障礙しやうがいをも見なかつたと思ふ、是れは規定さだめの祈祷会や晩餐会にまさりて、天父の嘉納まします所では無いでせうか、是れは神の殿みやがエルサレムでも無く、羅馬ラウマでもなく
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
江戸城中を混雑せしめたる当時と今日とを並べ見るの利益を有する人々には我文明の勢、なほ飛瀑千丈、直下して障礙しやうがいなきに似たる者あらんか、東西古今文明の急進勇歩、我国の如きもの何処いづくに在る。