隙漏すきも)” の例文
堤の上の安全燈からさす光のほかは、隙漏すきも燈火ともしびさえなかった。暗黒の中に大入道おおにゅうどうの様な句碑がニョキニョキ立並んでいた。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
めかけはいつでもこの時分には銭湯に行った留守のこと、彼は一人燈火あかりのない座敷の置炬燵に肱枕ひじまくらして、折々は隙漏すきもる寒い川風に身顫みぶるいをするのである。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それはかく、一青年と二警官とは、さいぜんの雨戸の外に立って、内部の様子を窺ったが、もうその時には、隙漏すきもる明りも見えず、人の気配さえしなかった。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)