陰闇いんあん)” の例文
寝台のそばにすわり、今は厳格荘厳な表情をしてるメルキオルの最後の眠りを見守りながら、彼は死者の陰闇いんあんな安らかさが心にしみ込むのを感じた。
西北の強風は三日の間小休こやすみもなく吹き、昼さえ陽の目を見せぬ陰府よみのような陰闇いんあんたる海をただよわしたすえ、四日午後になって、やっとのことで勢をおさめた。
藤九郎の島 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
それでクリストフは、自分の心を乱すその陰闇いんあんな力には一定の意味があり、しかもその意味は自分の意志と調和してるものだと、確信していた——確信したがっていた。
夜……ふち……光もなく、本心もなく……ただ「存在」が。「存在」の陰闇いんあん貪欲どんよくな力。無上に力強い喜悦。張り裂けるばかりの喜悦。空虚が石を吸い込むように、全身を吸い込む喜悦。