陣幕じんまく)” の例文
その陣幕じんまくをはらいあげて、忍剣にんけんは、蚕婆には見むきもせず、飛足ひそくばしておどりこむなり、稲妻いなずまのようにつぎのとばりのへ、チラとげこんだ黒衣こくいそでを、グッとつかんだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
劇壇において芝翫しかん彦三郎ひこさぶろう田之助たのすけの名を挙げ得ると共に文学には黙阿弥もくあみ魯文ろぶん柳北りゅうほくの如き才人が現れ、画界には暁斎ぎょうさい芳年よしとしの名がとどろき渡った。境川さかいがわ陣幕じんまくの如き相撲すもうはそのには一人もない。
銀座 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
と——武田菱たけだびしもんを打ったまえの陣幕じんまくが、キリリと、上へしぼりあげられた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
竹童はびっくりして、あわててそこを立ち去ろうとしたが、見ると! そこから数歩すうほ向こうに、この人なき陣幕じんまくのうしろにかくれて、あやしげな黒衣こくいの男が、じっと立ちすくんでいるのを見た。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)