闇々あんあん)” の例文
いっそう凄惨な余韻よいんめて、いかさま人の死にそうな晩だ、この濃い黒闇々あんあんの底にどれだけ多くのたましいがさ迷っていることか——あらぬことまで思わせるのだった。
穴の如く、その底よりは風の吹きづると思ふこく闇々あんあんたる坂下より、ものののぼるやうなれば、ここにあらば捕へられむと恐しく、とかうの思慮もなさでやしろの裏の狭きなかににげ入りつ。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
べにと緑の光弾、円蓋えんがい火箭ひや、ああ、その銀光の投網とあみ傘下からかさおろし、爆裂し、奔流ほんりゅうし、分枝ぶんしし、交錯し、粉乱ふんらんし、重畳ちょうじょうし、傘下からかさおろし、傘下し、傘下し、八方に爛々らんらんとして一瞬にしてまた闇々あんあんたる、清秀とも
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)