関船せきぶね)” の例文
「オオ、その元気がありゃ何よりのこと。じゃこうしよう、実は関船せきぶねの便乗もとうとう今日で駄目になっている」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この外に、昔は海戦に用い、その後は藩主や家老などの重臣の乗用になっている関船せきぶねというがあった。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
「はははは、に受けられては大変じゃ。知っての通り、他領の者は一歩も入れぬ阿波の御領地。ましてや厳しいお関船せきぶねへは、どんな恋女房でも乗せては行かれぬ」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかも、そいつア美しい生物で、イヤだと泣くのを手込てごめにして、お関船せきぶねの底へ隠し、他領者を入れちゃならぬ御城下へくわえこみながら、殿様の目をかすめているという人相だ……
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「昨年、殿と同船して帰国した時は、いかめしいお関船せきぶねで、船中も住居とかわらぬ綺羅きらづくしであったが、旅はむしろこうした商船あきないぶねで、穀俵こくだわら雑人ぞうにんたちと乗合のほうが興味深いものだ」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「で、近いうちには、お関船せきぶねの便がないから、上方へ荷をだす四国屋のあきない船へのせて貰うがいい。そして、帰りには、月の下旬に阿波へ戻る同じ船で、きっと帰ってこないと承知せぬぞ」
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは、安治川から水を引いて水門のうちへ諸船をつないでおくお船蔵ふなぐら——。荷船、脇船わきぶね色塗いろぬり伊達小早だてこはやなどが七、八そうみえる中に、群をぬいて大きな一艘のお関船せきぶねは阿波の用船千石づみまんじ丸。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)