鑁阿寺ばんなじ)” の例文
鑁阿寺ばんなじの秘封と聞く、家時公の御厨子みずしの“置文”を、お見せ下さいませぬか。ぜひ高氏に、このさい、披見をおゆるし下されませ」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
以てあたる所存ではおりまする。がただ一つ、兄上の胸底には、いまなお、鑁阿寺ばんなじ置文おきぶみが、お忘れなくあるのかないのか、それだけが
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兄者あにじゃ。……思い出してください。直義は鑁阿寺ばんなじ置文おきぶみを今とて夢にも忘れてはおりません。兄者には、いつかあれを、お忘れではないのですか」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かの“鑁阿寺ばんなじの置文”は、彼の初心しょしんを目ざめさせたものであったが、鎌倉在住このかたの頼朝崇拝は、いよいよその大望の抱卵ほうらんに、翼やらくちばしなどの
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まず鑁阿寺ばんなじを訪ねた。足利市の街中である。ほりは旧態をのこしているが、古図に見える林泉や大杉は面影もない。多宝塔そのほかの諸堂も荒れている。
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いつか、鑁阿寺ばんなじ御霊屋みたまやで、置文を御披見なされた折、兄者人は、その場で、あれを焼きすてておしまいなされた。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「高氏どの。あすの暁、鑁阿寺ばんなじへ来て、お待ちなさい。いつものよう暗いうちに、母も朝詣でにまいりますから」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かの鑁阿寺ばんなじ置文おきぶみは、そのときから彼の青春を、或る未知数な日までの、氷の中に閉じこめてしまっていた。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ううむ。察するに、そちは、この高氏が鑁阿寺ばんなじの“置文”を披見したのを、いつか知っておるのだな。……いや、どうして、それを知った。たれに聞いたぞ」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見ると壇には、足利家先祖の仮位牌と、またとくに、高氏の祖父にあたる七代の人——鑁阿寺ばんなじに謎の置文おきぶみをのこして憤死した——例の家時の位牌がべつにまつられていた。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
家祖家時の“鑁阿寺ばんなじ置文おきぶみ”も高氏の胸のふかいところで呼吸していたのではあるまいか。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今川了俊りょうしゅんも言い、二階堂や山名なども見たという。思うに、鑁阿寺ばんなじから副本(写し)か何かをとりよせ、直義がひそかに愛蔵して、一味の重臣に誇り語っていたものであろう。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そちは、わしの秘事を、ここで初めて口に出した。——かの鑁阿寺ばんなじ置文おきぶみのことまでを」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうです……。まさか矢来の外の人中に、殿がおいであろうなどとは、夢にも考えられませんでした。思うにこれも、鑁阿寺ばんなじの置文をのこされた先君せんくんの、おひき合せと存じられます」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
脚長あしなが香炉台こうろだいのうえに、床間掛とこのまがけの横物が見える。尊氏は紙燭を手に立って顔をよせた。その一、二ぎょうでもすぐわからずにはいられない物である。家祖かそ家時からの鑁阿寺ばんなじ置文おきぶみだった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四月、足利市、鑁阿寺ばんなじを中心に附近史跡をあるく。
年譜 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鑁阿寺ばんなじ置文おきぶみ