銀鼠色ぎんねずみいろ)” の例文
真珠のような銀鼠色ぎんねずみいろした小鳥の群が、流るる星の雨の如く、れ蓮にかくれた水の中から、非常な速度で斜めに飛び立った。
曇天 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
薄黒い空の下で、銀鼠色ぎんねずみいろに光っている海にも、また海岸に棲んでいる人民の異様な目にも、どの中にも一種の秘密がある。
冬の王 (新字新仮名) / ハンス・ランド(著)
浜松の飛行聯隊が、折柄おりからのどんより曇った銀鼠色ぎんねずみいろの太平洋上に飛び出していった頃から、第三師団司令部からの報告は、直接に高声器の中に入れられ、別府大将の前に据えつけられた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
空はやっぱり一面の黒雲に覆われ、風はなし、目路めじの限りの花の山は、銀鼠色ぎんねずみいろに眠って、湯の池にさざなみも立たず、そこにゆあみする数十人の裸女の群さえ、まるで死んだ様におし黙っているのです。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
気早きばやの人みだりにわれらを以て好古癖に捉はるるものとなすなかれ。われら真に良きものなれば何ぞ時の今古きんこと国の東西を云々うんぬんするのいとまあらんや。西班牙スペインに固有の橙紅色とうこうしょくあり。仏蘭西フランスに固有の銀鼠色ぎんねずみいろあり。
一夕 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)