銀屑ぎんせつ)” の例文
崖松がけまつをすかして下をのぞくと真っ白だ。乱岩らんがんに散る波の銀屑ぎんせつである。そして白い無数の渦潮、或いは青黒い渦である。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何時ものぼとぼとと重い牡丹ぼたん雪とちがって、氷を削ったような銀屑ぎんせつが風を交ぜて吹きなぐった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するといきなり眼の前に、ドウーッとっ白なものが光った。青い光線がひえびえと流れこんできた。見るとそれはきしをあらう渓流けいりゅうである。岩をかんで銀屑ぎんせつをちらす飛沫しぶきである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふもとの野呂川のろがわは富士川へ水つづき、いかだにうつった伊那丸と忍剣、龍太郎の三人は、そこで送りの兵をかえし、雪と水しぶきの銀屑ぎんせつを突ッきって、まっしぐらに、東へ東へとくだっていった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)