釣瓶縄つるべなわ)” の例文
上窄うえすぼまりになったおけ井筒いづつ、鉄のくるまは少しけてよく綱がはずれ、釣瓶つるべは一方しか無いので、釣瓶縄つるべなわの一端を屋根の柱にわえてある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
水牛が、釣瓶縄つるべなわを引くと、絞め殺されるような音を立てる。陽は落ちんとして、マハナディ三角洲デルタはくらいもやのしたにあった。
一週一夜物語 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
私は台所口で寺男が内職に売っているしきみを四五本買って、井戸へ掛って、釣瓶縄つるべなわが腐って切れそうになっているのを心配しながら、漸く水を汲上げた。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
清人は、深夜の井戸端いどばたへ駈け出して、氷のとげが生えている釣瓶縄つるべなわを見ながら、真ッ裸になるのだった。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しんがりに残った影武者のひとりと佐分利さぶり五郎次とが、つづいて釣瓶縄つるべなわにすがって片足かけたとき、早くもなだれ入った伊那丸勢いなまるぜいのまっさきに立って、疾風しっぷうのごとく飛んできたひとりの敵。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)