邪淫じゃいん)” の例文
近頃の新聞の三面、連日に、偸盗ちゅうとう邪淫じゃいん、殺傷の記事を読む方々に、こんな事は、話どころか、夢だとも思われまい。時世は移った。……
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
汝、われら悪魔がこの悲しき運命を知るや否や。わがかの夫人を邪淫じゃいんあなに捕えんとして、しかもついに捕え得ざりしを見よ。
るしへる (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
これまで家庭というものを持たず、ただ『邪淫じゃいん』のみを愛してきた、老放蕩児にとって、こういうことはすべて思いもかけぬ賜物であった。
黙れ武者所鬼王丸! 小細工などとは何事じゃ! この不思議こそ神の怒り! すなわち邪淫じゃいんのこの儀式を喜び給わぬ何よりの証拠じゃ! 邪心よこしまごころ改めればよし
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
殺生も悪いけれど邪淫じゃいんもよくない、女という奴、十悪と五障の身を持ちながら、あたら男を迷わして無限の魔道へ引張り込む、その罪は禁断の場所で鵜を使って雑魚ざこを捕ったどころの罪ではない。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
神職 聞けば、聞けば聞くほど、おのれは、ここだくの邪淫じゃいんを侵す。言うまでもない、人の妾となって汚れた身を、鏝塗こてぬり上塗うわぬりに汚しおる。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しばしば DS が天人てんにんのために苦しめらる。汝知らずや、さきの日汝が懺悔こひさんを聞きたる夫人も、「るしへる」自らその耳に、邪淫じゃいんの言を囁きしを。ただ、わが心弱くして、飽くまで夫人をさそう事能わず。
るしへる (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)