達磨船だるません)” の例文
僕は隅田川の川口に立ち、帆前船ほまへせん達磨船だるませんの集まつたのを見ながら今更のやうに今日の日本に何の表現も受けてゐない「生活の詩」を感じずにはゐられなかつた。
今日こんにちまで吾々が年久しく見馴れて来た品川の海はわづか房州通ぼうしうがよひの蒸汽船とまるツこい達磨船だるません曳動ひきうごかす曳船の往来するほか、東京なる大都会の繁栄とは直接にさしたる関係もない泥海どろうみである。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
その内に又馬車が動き出すと、鉄橋のかかった川の側へ出た。川には支那の達磨船だるませんが、水も見えない程群っている。川のふちには緑色の電車が、なめらかに何台も動いている。
上海游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
今日までわれわれが年久しく見馴れて来た品川の海はわずか房州通ぼうしゅうがよいの蒸汽船とまるッこい達磨船だるません曳動ひきうごかす曳船の往来するほか、東京なる大都会の繁栄とは直接にさしたる関係もない泥海どろうみである。
それから大きい浚泄船しゅんせつせんが一艘起重機をもたげた向う河岸も勿論「首尾の松」や土蔵の多い昔の「一番堀」や「二番堀」ではない。最後に川の上を通る船でも今では小蒸汽や達磨船だるませんである。
本所両国 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)