逸見へんみ)” の例文
「わしは知っておるばかりでなく、武州小川の逸見へんみの道場で、その男と試合をしたことがある。しかも負けた」と冬次郎はいった。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
いえいえ、兄は到底とうていあなた様の敵ではござりませぬ、同じ逸見へんみの道場で腕を磨いたとは申せ、竜之助殿と我等とは段違いと、つねづね兄も申しておりまする。
話がしもさがって来る。盲汁の仲間には硬派もいれば軟派もいる。軟派の宮裏みやうらが硬派の逸見へんみにこう云った。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
甲州では逸見へんみ筋浅尾村の孫左衛門を始めとし、金御岳かねのみたけに入って仙人となったという者少なからず、東河内領の三沢村にも、薬を常磐山に採ってかえらなかった医者がある。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
このほかにも俗字の苦情こごとをいえば、逸見へんみもいつみと読み、鍛冶町かぢちょうも鍛冶町と改めてたんやちょうと読むか。あるいはまた、同じ文字を別に読むことあり。こは、その土地の風ならん。
小学教育の事 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
庄太郎は、この一つ目からすぐ傍の、弥勒寺みろくじまえ、五間堀の逸見へんみ若狭守様のお上屋敷へ、屋根の葺きかえに雇われていて、きょうは、仕上げの日だ。急ぐので、中腰に、飯をかっこんでいた。
聞けばお前さんは小川宿の、逸見へんみ多四郎先生の、直弟子で素晴らしい手並とのこと、以前から一度立合って、教えを受けたいと思っていた。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
御家新ごけしん逸見へんみ流の弓の名人だそうで、へえ。」
「甲源一刀流祖逸見へんみ太四郎義利孫逸見利泰よしとしそんへんみとしやす……」
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
聞けば高萩の猪之松は、逸見へんみ多四郎から教えを受け、甲源一刀流では使い手とのこと、林蔵といえどもこの拙者が、新影流は十分仕込んで置いた。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ははあ、甲源一刀流、秩父の逸見へんみだな」
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
井上嘉門の一団であったが、四梃の駕籠に乗っている者は、嘉門と逸見へんみ多四郎と、お妻とそうして東馬とであった。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
武州練馬の樋口十郎左衛門、同じく小川の逸見へんみ多四郎、それから、それからもう一人! うん、そうだ、あの人だ!
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)