途上みち)” の例文
この男の語るところによれば、かれはそれを途上みちで拾ったが、読むことができないのでこれをうちに持ち帰りその主人に渡したものである。
糸くず (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
一色ノさとには、きのう途上みちにてお会いなされた不知哉丸さまの母御前藤夜叉さま、おあるじの刑部殿、ほか一族どももお待ち申しておりましょう。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
筆箱のカチャカチャと鳴る音がいつまでも耳に残り、こんなことがあってから寿女は、途上みちで女の子を見付けると周章てて道をそらしたりした。
痀女抄録 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
あらがうべきすべもなくて、言わるるままに持ち合せの衣類取り出し、あるほどの者を巻きつくれば、身はごろごろと芋虫いもむしの如くになりて、やがて巡査にともなわれ行く途上みちの歩みの息苦しかりしよ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
途上みちで、道誉と別れた高氏は、ふたたび、ぶらりぶらりの馬居眠りでもして行くような姿だったが、胸のうちでは
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
足利家とは縁も深い母子おやこ法師の危機を途上みちで知って、その急を、彼女が一色党の人々へらせたなども、輪廻りんね
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
呼延灼こえんしゃくは心中、つくづく、途上みちで感じていた——。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)