逆立よだ)” の例文
世に無惨むざんなる話しは数々あれど本年七月五日の朝築地あざな海軍原の傍らなる川中に投込なげこみありし死骸ほど無惨なる有様は稀なりかくさえも身の毛逆立よだつ翌六日府下の各新聞紙皆左の如く記したり
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
この恐ろしい混沌の中から逃げ出そうと必死になって這いずり廻ると、自分の掌に苔のようなものや爬虫類の肌のようなヌルヌルしたものがまつわりつき、思わずゾッと身の毛を逆立よだたせる。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
本気、狂気の見分けも附けずに。滅多矢鱈めったやたらに追い込み蹴込むと。聞いただけでも身の毛が逆立よだつ。地獄というのがそこらに在ります。見かけは立派な精神病院。嘘というなら這入って見なされ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)