逃場にげば)” の例文
それでも、逃場にげばのないかれらは、気がちがった獣のように、わが陣地の前まで突撃しては、重迫撃砲に射たれて、とどめをさされるのだ。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
この騒ぎを聞付ききつけて、町の家々でも雨戸を明けた。「賊だ、賊だ。」と叫ぶ声がそれからそれへと伝えられた。重太郎は哀れや逃場にげばを失った。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
まして立ち上がる湯気の、こまやかなる雨におさえられて、逃場にげばを失いたる今宵こよいの風呂に、立つを誰とはもとより定めにくい。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
藤新の亭主一人は逃場にげばを失い、つくねんとして店頭みせさきに坐って居りました。
「それより外にあたしの逃場にげばがなかったんだもの。」