返忠かへりちゆう)” の例文
返忠かへりちゆうの者といはれん事口惜しく候、又申さぬ時は、重恩をかうむり候主君へ弓を引くべし、此旨を存じ、我名を隠してくの如し
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
中にも非行の同類が告発をするのを返忠かへりちゆうと称して、これに忠と云ふ名を許すに至つては、奨励の最顕著なるものである。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
横着者わうちやくものだなとは思つたが、役馴やくなれた堀は、公儀こうぎのお役に立つ返忠かへりちゆうのものを周章しうしやうの間にも非難しようとはしない。家老に言ひ付けて、少年二人を目通めどほりへ出させた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
形式にからまれた役人生涯に慣れてはゐても、成立してゐる秩序を維持するために、賞讃すべきものにしてある返忠かへりちゆうを、まことの忠誠だとることは、うまれ附いた人間の感情が許さない。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)