しんにゅう)” の例文
或いはそれにしんにゅうをかけた程度のものが集まっていると見れば差支えないが、さりとて、相当堅気のものも好奇ものずきで寄って来ている。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その前からちらほらとそんな噂が漂っていたのであるが、このビョルゲ事件で一層評判に、しんにゅうがかかったということができる。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
薬売りにしんにゅうをかけた様な今日の医者の仕事があまりに単調にして、面白くなきに厭き果て、何とかしてより多き利益を地方人に与へんものと、図らず之を思ひ附いたのです。
太平洋食堂 (新字旧仮名) / 大石誠之助(著)
その眼は、しんにゅうの最後の一画を、眉の下へ置いたかのように、長く、細く、尻刎ねしていた。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ところが、此の書盗にしんにゅうをかけたのが、書籍欲しさの人殺しで、斯んな奴に会ったら、それこそ百年目である。以下、愛書癖の穏健派から過激派に至る段階を、順を追うて説く事にしよう。
愛書癖 (新字新仮名) / 辰野隆(著)
正直正銘、金箔きんぱく付きの。精神病者が落ち行く地獄じゃ。尋常普通のキチガイ地獄じゃ。さてもこれから今馬力ばりきと。親に不孝な馬鹿声張り上げ。弁じ上げます地獄の話は。それにも一つしんにゅうませた。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「僕の時冷かしたけれど、あれにしんにゅうをかけたようだって」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
当時この皇帝の寵姫ちょうきに、評判の美女でマルシャという才気煥発な女がありまして、この女がまた帝にしんにゅうをかけたような浪費家であり、なかなか姦智かんちけて事々に愚かな帝を操縦しておりましたので
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)