かゞやか)” の例文
元寇は、日本のかゞやかしき大勝に終つたが、その戦禍を甚だしく受けたものは、戦勝の殊勲者たる鎌倉幕府それ自身であつた。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
翌日かれ等三人がその湯元に行つた時には、あたりは晴れて、かゞやかしい日影がさし込んで来てゐた。緑葉の葉裏は風に光つて、谷の底では水の音が嗚咽すゝりなきのやうにかすかに鳴つてゐた。
父親 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
燭臺の彫刻や金色こんじき造花つくりばなをおぼろにかゞやかすばかり、參詣の群集をしてはとても仔細に其の内部を窺はしむるに堪へぬ程、無限の神祕を帶びて、闇の中から現はれた夢のやうに浮いて居た。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
歐米の各地で其の時々に買集め其の時々の感慨を托した書籍が美しい背皮と金文字とを竝べかゞやかしてゐる本棚や又床の間や壁に掛けた風景畫、古名畫の寫眞、書棚の上に置いた小さなタナグラの陶像。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)