軒提灯のきぢょうちん)” の例文
旧字:軒提燈
二十四年の六月十四日、今年は日枝ひえ神社の本祭りで、わたしの家の近所では軒提灯のきぢょうちんを懸けている朝、わたしは菓子の折をかかえて築地の桜痴居士の家をたずねた。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
本所亀沢町の掘割に面した百坪ばかりの空地に、毎晩「貝屋」という軒提灯のきぢょうちんをかかげた屋台店が出る。
夜の蝶 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
町をまわりすました後では、揃ってこの演芸館へ練込んで、すなわち放楽の乱舞となるべき、仮装行列を待顔に、掃清はききよめられたさまのこのあたりは、軒提灯のきぢょうちんのつらなった中に
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
近きにお祭があるというので、軒提灯のきぢょうちんを吊してうるわしく飾っていた。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)
飲食店の時間にきびしい制限が布令ふれだされ、もちろん裏はあるにはちがいないが、この魚河岸はまるで別格のようで、表もあけたまま、軒提灯のきぢょうちんも掛けたまま、客は遠慮のない高ごえで
おさん (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
氏子うじこの町内も軒提灯のきぢょうちんぐらいのことで、別になんの催しもございませんでした。
蜘蛛の夢 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あすこだろう、店頭みせさき雪洞ぼんぼりやら、軒提灯のきぢょうちんやら、そこは通った。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その花暖簾はなのれん軒提灯のきぢょうちんの華やかな光景はもう見られない。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)