)” の例文
幹太郎は川岸のほうへ大きく跳び、二度、三度と突っかけて来る安の匕首をわしながら、さっと相手のきき腕を取ると、足搦あしがらみをかけて投げとばした。
花も刀も (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
汽車のとどろきの下にも埋れず、何等か妨げ遮るものがあれば、音となく響きとなく、飜然ひらりと軽く体をわす、形のない、思いのままに勝手な湧出わきいずる、空を舞繞まいめぐる鼓に翼あるものらしい
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
直二郎はひらりと体をわし、築山の裏側へどんどん逃げだした。老人は追っかけた。
明暗嫁問答 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
僥倖さいわいそこでも乗客のりてが込んだ、人蔭になって、まばゆい大目玉の光から、顔をわしてまぬかれていたは可いが、さて、神楽坂で下りて、見附の橋を、今夜に限って、高い処のように、危っかしく渡ると
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし極めてわずかなところで刃は、わされた。そして通胤が、右へひらきながら抜き打ちに浴びせた一刀は、逆に男の背筋をしたたかにり放し、かえす太刀で太腿ふとももいでいた。
城を守る者 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
伊兵衛は体をわすとでもいうようにつと起った。それに続くべきさえの言葉の重大さが、光のように彼の感情へ反射したからである。縋りつくようなさえの眼から外向きながら、彼はもういちど
彩虹 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)